はじめに
先日のことですが、XYZさんの掲示板で最近話題になった投稿の中にRJGさんの投稿がありました。その投稿の中では、ループを並列に並べたものをクロス接続すると感度低下し、平行接続すると感度が上昇したことが書かれていました。そのことに私も興味を持ち、いくつかの実験を行ったところ同様の結果が得られました。
その後、DFSさんがAAA-1とPCL(parallel crossed loop)を使い、クロス接続と平行接続で追試を行われて、その時のPERSEUS受信ファイルをアップロードされました。私もそのファイルの受信音声を比較しながら興味深く聴くことができました。DFSさんありがとうございます。
さて、ループの配置や接続方法の違いが、どのように受信感度に影響するのでしょうか? このことに興味を持ったので少し調べてみることにしました。
使用したループについて
今回実験したループ配置は、WSMLオリジナルの8の字配置の他に、平行配置と◎(二重丸)配置で行いました。 実験に使った2つのループ寸法と材質は以下のようなものです。
- Loop1:
- 直径1.0mループ(WSMLで現用中)、幅20mm、厚さ3mmのアルミ・フラットバー
- Loop2:
- 直径0.64mループ(以前に試作した時のもの)、幅20mm、厚さ2mmのアルミ・フラットバー
ループの配置
下図は、今回実験したループどうしの位置関係を表しています。左から順に、8の字配置、平行配置、◎(二重丸)配置となっています。
8の字配置はループを上下に、給電点を約20cmの間隔で並べた状態。 平行配置はループを同軸上に、給電点を約20cmの間隔で並べた状態。 ◎(二重丸)配置はループを同心円上に、給電点を約18cmの間隔で並べた状態です。
ループの接続方法
次の図は、2つのループLoop1とloop2の接続方法を表しています。左から順に、クロス接続、平行接続です。実際の接続には2.0sqの電線の両端に、2-M4圧着端子を取り付けたものを使用しました。
クロス接続は、ループの給電部分が交差するように接続した状態。平行接続は、ループの給電部部を平行に接続した状態です。
ループのインダクタンス特性とS/L比
上記のループ配置と接続方法の組み合わせを替えて、それぞれのインダクタンスを測定しました。
インダクタンス測定は、APB-1とリターンロスブリッジを組み合わせた、APB-1のインピーダンス・アナライザ・モードで行いました。リターンロス・ブリッジは先日製作したものです。
次の表は、ふたつのループの組み合わせのインダクタンス特性の測定結果です。
測定周波数は、DFSさんが追試されたときの10MHz付近の変化に興味があったので、インダクタンスの測定周波数を9.9MHzにしました。(カーソルを10.0MHzに合わせたかったのですが、カーソル・ステップの都合で9.9MHzになりました。)
次の表は、測定結果からS/L比を計算し、S/L比を降順に並べ替えたものです。
S/L比について
WSMLの作者Chavdarさんが書かれたwideband-small-receiving-loop-simplified.pdf によると、
ループの誘起電流が大きくなると感度が向上し、その電流の大きさは S/L 比で決まると書かれています。
以下の引用は、一部を翻訳したものです。
This is a small loop connected to an amplifier with very low input resistance e.g. 3 ohms. The small loop is injecting current into this amplifier. The loop works almost in short circuit mode (shunted with 3 ohms resistor). This current is induced by the electromagnetic field. The higher the current the better will be loop sensitivity.
これは、大変低い入力抵抗(例えば 3 Ω)の増幅回路に接続されたスモール・ループである。スモール・ループは増幅回路に電流を注入している。ループは、ほとんど短絡モード( 3 オームの抵抗を短絡して)で動作する。この電流は電磁場によって誘起される。電流が高ければ高いほど、ループの感度はより良くなる。
The magnitude of this current I depends only from 2 factors: proportional to loop area S and inversely proportional to loop inductance L. It does not depend from the frequency!. The shape of the loop is important only as factor which influences the loop inductance.
この電流 I の大きさは、ただ 2 つの要因によって決まる:ループの面積 S に比例し、ループのインダクタンス L に反比例する。それは周波数に依存しない! ループの形は、唯一ループインダクタンスに影響を及ぼす要因として重要である。
今回のまとめ
ループの誘起電流と受信感度は比例関係にあり、この電流はS/L比とも比例関係にあります。今回は2つのループ配置や接続方法の違いとが、どのように受信感度に影響するのかを調べるために、ループのインダクタンスを測定しました。そして、その結果からS/L比を求めました。
今回の測定結果から、ループの組み合わせとインダクタンスの関係についてわかったこと。
- インダクタンスの値はシングル>平行接続>クロス接続の順で小さくなる。
- クロス接続のほうがS/L比が良い。
- 平行配置と◎(二重丸)配置のインダクタンスは、平行接続からクロス接続に変えると値が大きく減少する。
- ループの直径が小さくなると、インダクタンスが減少する。
S/L比の大きいものは受信レベルが大きくなるはずですが、先日行った受信レベルの比較実験とは異なる結果になりました。 そのときは、平行配置と二重丸配置の受信レベルが、クロス接続で低下し平行接続で上昇する結果でした。 他にも、DFSさんが行われた8の字配置の実験で、10MHz付近の受信レベルが、クロス接続より平行接続のほうが大きい結果でした。
前回の結果と今回の実験結果からわかったことは、S/L比が大きくても受信感度が低下する場合(組み合わせ)があることがわかりました。 引き続き、S/L比の他に受信感度に影響を与えるものを調べていきます。
つづく
インダクタンス測定結果
以下は、今回のインダクタンス測定結果です。
シングルループの特性
直径1.0m シングル・ループ
直径0.64m シングル・ループ
8の字配置の特性
8の字配置 クロス接続
8の字配置 平行接続
平行配置の特性
平行配置 クロス接続
平行配置 平行接続
◎(二重丸)配置の特性
◎(二重丸)配置 クロス接続
◎(二重丸)配置 平行接続
つづく
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