2013年3月27日水曜日

WSML ループ単体の受信レベル

前回の実験では受信感度を高める要因のひとつ、S/L比を求めるためにループのインダクタンスを測定しました。その結果からは、S/L比が大きくても受信感度が低下する場合があることがわかりました。

ループの組み合わせ(配置と接続方法)と受信レベルとの関係はどのようになっているのでしょうか?今回はループの受信レベルを測定しました。



受信レベルの測定

今回の実験では、ループ・エレメントの受信レベルを(アンテナ・アンプを使用しない状態で)測定します。測定はAPB-1のスペクトラム・アナライザ・モードを使用しました。

APB-1の入力インピーダンス(50Ω)は、WSMLアンテナ・アンプの入力インピーダンス(約3Ω)に比べて大きいために測定結果に影響あるかもわかりませんが、受信レベルの相対的な比較できればよいと考えました。そのためインピーダンス整合をせずに直接接続しています。


測定周波数

APB-1のスペクトラム・アナライザ・モードでは、2つの測定カーソルが設定できます。今回設定する周波数は、1MHzと10MHzの付近から安定して受信できる放送局を選びました。

  • 1MHz付近からは、地元放送局 KBS京都1,143kHz (かなり強力)
  • 10MHz付近からは、ラジオ日経 9,595kHz

これらの周波数で受信レベルを測定しました。


受信レベルの測定結果

次の表は測定結果をS/L比順に並べ替えたものです。受信レベルの単位はdBです。

次の表は測定結果を1143kHzの受信レベルで降順に並べ替えたものです。

次の表は測定結果を9595kHzの受信レベルを降順に並べ替えたものです。

参考データ(以前の記録)

次の表は先日実験したときのもので、ループ単体の受信レベルを室内で測定したデータです。

次の表は少し前にベランダで実験したときのデータです。このときはループをWSMLのアンテナ・アンプに接続し、その出力を二分配後に、IC-R75とAR7030PLUSを接続して受信しました、そのときのSメーター指示値を記録しています。実際の使用に近い状態です。



今回のまとめ

今回はループの組み合わせ(配置と接続方法)と受信レベルとの関係を調べるため、ループ単体の受信レベルを測定しました。

今回の実験ではS/L比が同じような値でも、面積やインダクタンスが違う(約2倍)ループを使用しました。さらに実験場所が、建物の影響を受けやすい限定された空間(ベランダ)だったり、アンテナ・アンプを使用せずにAPB-1の50Ω入力に接続しました。そのため多ループ化の効果がわかりにくい結果になってしまいました。
1mシングル・ループを基準にすると他ループ化の効果が判りにくいですが、見方を変えて0.64mシングル・ループを基準にして比べると、他ループ化の効果が少し表れているようにも見えます。


周波数による各ループの組み合わせの特徴。

1143kHzでは、

  • インダクタンスが大きいループ(1mシングル)の受信レベルが高い。
  • 受信レベルが高い組み合わせは、1mシングルと8の字-クロス接続、そして◎(二重丸)配置と平行配置の各平行接続(この2つはS/L比が悪かった組み合わせ)。
  • 受信レベルが低い組み合わせは、0.64mシングル、◎(二重丸)配置と平行配置の各クロス接続(この2つはS/L比が良かった組み合わせ)、8の字-並行接続。
  • 各組み合わせ全体の受信レベルの差(最大値と最小値の差)は17.17dB。
  • ◎(二重丸)-平行接続は1.5MHzあたりに変な山が見えます、◎(二重丸)配置はLoop1にLoop2を内包した配置なので、互いのループが結合しているのでしょうか?
  • 以前に記録した211kHzでは、1mシングル・ループや◎(二重丸)-平行、8の字-クロスが良い結果でした。この結果は、今回実験した1143kHzの受信レベルと同じ傾向が出ています。

9595kHzでは、

  • 受信レベルが高い組み合わせは、平行-平行接続と1mシングル、そして◎(二重丸)配置の平行接続とクロス接続(この2つはS/L比が悪かった)。
  • 受信レベルが低い組み合わせは、8の字配置の並行接続とクロス接続、0.64mシングル、平行-クロス接続(これはS/L比が良かった)。
  • 各組み合わせ全体の受信レベルの差(最大値と最小値の差)は6.43dB。
  • この周波数の平行配置は接続方法の違で受信レベルに大きな差が出ました。特に平行接続が良く、これは低い周波数でもそこそこ良い結果を出しています。反対に、クロス接続の場合はどの周波数でも結果が良くありません。

周波数別の受信レベルの差は、1143kHzの(17.17dB)に対して9595kHzが半分以下の(6.43dB)。



今回の測定結果から、ループの組み合わせと受信レベルの関係についてわかったこと。

低い周波数帯(LWやMW)では、ループの組み合わせの違いが分かり易いです。そのなかで、8の字-並行接続や、平行と◎(二重丸)の各クロス接続は、シングル・ループに比べて大きく感度が低下する組み合わせということがわかりました。

低い周波数帯で受信レベルの値が近い、8の字-クロス接続と、◎(二重丸)-平行接続や、平行-平行接続は、低い周波数帯ではよく似た特徴がありますが、10MHz付近(9595kHz)になると特徴に違いが表れます。そのなかで平行-平行接続は、どちらの周波数でも受信レベルが良好なことがわかりました。

反対に、この10MHz付近(9595kHz)の結果には、よくわからない部分もあります。◎(二重丸)や8の字配置は、接続方法の違いによる受信レベルの差は僅かです。さらに不思議なことは、8の字-クロス接続よりも、8の字-並行接続の受信レベルが僅かに高い結果になりました。これは、LWやMWとはずいぶん違う結果です。他にも何か要因があるのでしょうか?
考えてみるとこの周波数(9595kH)の0.1波長は3.12mですが、これは1mループのループ長3.14mにとても近い長さです。このあたりが関係しているのでしょうか。

多ループ化については、同じサイズのループを使わないと効果が少ない(判りにくい)こともわかりました。

今回良い結果が出た平行-平行接続はとても興味深いです。機会があれば同じサイズのループを組合わせて追試してみたいですね。

次回は、ループの電流について考えてみます。
つづく



今回の測定結果を以下に記載します。(ループ・エレメントの受信レベルを、アンテナ・アンプを使用しない状態で測定しています。)

シングルループの特性

直径1.0m シングル・ループ

直径0.64m シングル・ループ


8の字配置の特性

8の字配置 クロス接続

8の字配置 平行接続


平行配置の特性

平行配置 クロス接続

平行配置 平行接続


◎(二重丸)配置の特性

◎(二重丸)配置 クロス接続

◎(二重丸)配置 平行接続

2 件のコメント :

DFS さんのコメント...

こんにちは。
精力的な実験大変興味深く拝見しています。
当方の受信ファイルが役に当たったかは疑問ですが、お聞きいただきありがとうございました。

Loopの組み合わせ、位置関係も含めて比較実験されていて面白いです。
当方は8の字配置以外思いつきもしませんでしたw
指向性(NULL)なども実験できると尚よいですね。
平行配置(同軸配置も?)は一種のFat化効果が有るようにも思えますがいかがでしょう?
そう考えると平行が好結果になりそうです。

パラクロスより並行接続が良い周波数帯が有るのは確かなようです。
当方も更に受信テストしたいところです。
アイディアとしては給電部に接続切り替えリレーを追加してみるとか面白そうですね。

まだ実験続くようですので楽しみにしています。

babooshka さんのコメント...

こんばんは、DFSさん。
コメントありがとうございます。

受信ファイルは10MHz付近の受信レベルの比較にとても役立ちましたよ。ループの接続違いで受信レベルが変化している様子がよく確認できました。

NULL特性は気になっていたのですが、ベランダ設置ゆえに開口面が南だけなので、どうしたものでしょう。XD

平行配置は考え方によってはFat化効果と言えそうですね、ループ電流に秘密がありそうな気がしています。

給電部の切り替えリレーは便利そうですね。
先日の実験のとき、組み合わせを切り替える都度に部屋とベランダを行ったり来たりでした。: )

スローペースの実験ですが、気長にお付き合いください。